スペアタイヤの交換方法とは?

手順やスペアタイヤの寿命について解説。

最近はクルマの標準装備として省かれていることもありますし、トラブルがあったときに使用するものゆえ点検でもしなければ滅多に目にすることがない「スペアタイヤ」。そもそもスペアタイヤとは何か、みなさんはご存じでしょうか。今回は乗用車のスペアタイヤの役割から交換方法と手順、さらにはスペアタイヤの点検の必要性について、使用したことがない方にも分かりやすく解説します。

スペアタイヤとは何か

スペアタイヤとは何か

タイヤのパンクはクルマのトラブルの中でも頻度の高いものです。2020年におけるJAFのロードサービス出動理由を調べたデータでは、1位が全体の43%を占めるバッテリー上がり、そして2位が33%のタイヤのパンクと続きます。そのためクルマを運転するドライバーはタイヤのトラブルに備える必要がありますが、損傷したタイヤの代わりに装着して走行できるようクルマに搭載されているのが「スペアタイヤ」です。

スペアタイヤには大きく分けて2種類あります。まずはクルマが履いているものと同じ標準装着タイヤ」を搭載している場合。トランクルームなど搭載スペースに余裕があるクルマに採用されていることが多く、またSUVや4×4モデルなどは標準装着タイヤをスペアタイヤとして採用する場合も少なくありません。標準装着タイヤがスペアタイヤの場合は、交換してしまえば普段通りに走ることができます。

もうひとつはテンパータイヤ(テンポラリータイヤ)」を搭載している場合です。タイヤトラブル時のみに使用する緊急時用のタイヤで、標準装着タイヤと比較してタイヤ外径は変わりませんが、タイヤ幅、接地面積が小さいのが特徴です。標準タイヤよりも小さいため、設置スペースやクルマの積載重量を抑えることができます。テンパータイヤは最高速度や走行距離に制限があり、あくまでタイヤ交換ができる施設まで走るための応急用タイヤと位置づけられています。

タイヤ交換に必要な工具

それではスペアタイヤの交換について順を追ってご説明しましょう。まずは車載工具セットについて。いざというときに慌てないよう、工具類がどこに収められていて、どのような種類が用意されているかについては事前に確認しておきたいものです。車載工具セットはタイヤ・ホイールを交換するためのツールがメインとなりますので、スペアタイヤの近くに搭載されていることがほとんどです。荷室フロア下のスペアタイヤが取り付けられた場所のほか、荷室内の左右にいずれかに設けられた工具スペースなどに収められていることが多いようです。

車載工具には、ホイールナットレンチ、ジャッキ本体、ジャッキハンドル、輪止め、けん引フックなどが用意されていることが一般的です。ホイールナットレンチは、ホイールを固定しているホイールナット(もしくはボルト)を緩めたり締め付けたりする工具で、タイヤ・ホイールの脱着に使用します。ジャッキはジャッキハンドルを組み合わせてクルマを持ち上げ、タイヤ・ホイールの脱着を行うための工具です。輪止めは、クルマが長時間停車する際に動き出さないように締めに置きタイヤに噛ませるものです。けん引フックは、クルマが自走できずけん引してもらう際に使用します。

タイヤ交換に必要な工具

スペアタイヤの交換方法

タイヤのトラブルはいつ起こるかわかりません。ですからスペアタイヤへの交換をどのように行えばよいのか、ぜひ頭に入れていただければと思います。ここではスペアタイヤへの交換手順をご説明しましょう。

安全で周囲の邪魔にならない場所に停止
後続車からはっきり見え、他車のスムーズな走行を妨げない安全な場所にクルマを停めます。また作業を安全に行うため、地面が固く平らな場所を選びます。
クルマが動き出さないよう細心の注意を払う
オートマチック車はシフトレバーをP(パーキング/オートマチック車)に、マニュアルシフト車はギヤをR(後退/マニュアル車)に入れ、どちらも必ずパーキングブレーキを作動させます。
さらにクルマが動き出さないよう輪止めを使用
交換するタイヤの対角線上の車輪に輪止めをしっかりと噛ませ、クルマが動き出さないようにします。
三角表示板などで後続車に存在を知らせる
クルマを停めたら三角表示板や警告灯、発煙筒などを用いて、停止車両があることを知らせます。非常点滅灯(ハザードランプ)も点滅させます。
パンクしたタイヤのホイールナットを緩める
ジャッキアップする前に、ホイールキャップが装着されている場合は外し、ホイールナットレンチを使用してホイールナットを少しだけ緩めておきます。
ジャッキアップし外すタイヤを浮かせる
外したいタイヤ・ホイールを持ち上げられるジャッキアップポイントを確認し、ジャッキをあててタイヤが地面から少し離れるまで持ち上げます。
ナットを外し、タイヤ・ホイールを外す
緩めておいたホイールナットをタイヤからすべて取り外し、タイヤを外します。外したタイヤはジャッキが外れたときの事故防止策としてボディの下に入れます。
スペアタイヤを装着し、ナットを仮締めする
スペアタイヤを取り付け、ホイールナットをタイヤががたつかなくなるまで、2回から3回に分けて仮締めします。
ジャッキを外して、ナットを本締めする
車体をおろした後、ジャッキを外してから、緩みが無いよう仮締めの時と同じように2回から3回に分けてホイールナットの本締め(増し締め)をします。
なお、車載工具、スペアタイヤの搭載場所やパンク時のタイヤの交換については、クルマの取扱説明書に記載がありますので、詳細はそちらをご参照ください。
車検の満了日の確認方法

スペアタイヤの寿命と交換目安

車検においてスペアタイヤの状態を確認することはありませんので、どんなに古いスペアタイヤと搭載していても、交換をすすめられる機会は非常に少ないと言えます。しかし、タイヤはさまざまな材料からなるゴム製品です。ゴムの特性が経時変化していくにしたがってタイヤの特性も変化しますが、その変化は環境条件、保管条件、使用方法(荷重、速度、空気圧等の違い)などによって左右されます。

ですから使用開始から経過した年数で使用期限を示すのは難しいのですが、あくまで目安としては使用開始後5年以上経過したタイヤについては、継続使用に適しているかどうかすみやかにタイヤ販売店等での点検を受けることが推奨されています。さらに溝の深さが法律に規定されている値まですり減っていない場合でも、ひとつの目安として製造後10年経過したタイヤは新品タイヤに交換することがおすすめです。そしてこれはスペアタイヤについても何ら変わりありません。

また、スペアタイヤについては少なくとも月に1回は空気圧点検をおすすめします。タイヤの溝の深さや摩耗具合、キズやヒビ割れの有無なども点検していただければと思います。

スペアタイヤの装備と交換後について

万が一のトラブルに対する備えとして必要な装備というイメージが強いため、スペアタイヤの搭載は必須、つまり法規等で定められた義務だと思われがちですが、実はそうではありません。車検の際もスペアタイヤを装備する必要はありませんし、最近では新車にスペアタイヤが搭載されていないことも珍しくありません。

タイヤ・ホイールはクルマの部品としてはとても大きく重い部類に入るので、よりコンパクトに収納できるよう1970年代には応急用タイヤの開発が進み普及しました。しかしさらなる省燃費などを見据えた軽量化に対する要求などにより、現在は一時的な走行を可能にするパンク応急修理キットがスペアタイヤに取って代わりつつありますが、スペアタイヤを標準搭載しているクルマがなくなったわけではなく、車両購入時にオプションで選択できることもあります。

さて、もしスペアタイヤに交換したら、そのまま日常的に乗り続けることなく、まずはタイヤ専門店や修理工場、ガソリンスタンドなどで点検やタイヤ交換を行ってください。前述の通り応急用タイヤはタイヤを交換できる場所まで走行するためのものですので、できるだけ早くそれまで履いていたサイズや銘柄のタイヤへの交換をおすすめします。

そして、パンクしたタイヤと同じスペアタイヤへ交換した場合でも、点検が必要です。ホイールナットの本締めを行う際には、力任せに締め付けてしまうとボルトが破損してしまう場合があるので、本来はクルマの取扱説明書に記載がある規定トルク(締め付ける力)で締め付けます。もし、締め付けルクを指定できる工具「トルクレンチ」を用意しておけばいいのですが、車載のホイールナットレンチで作業した場合は、できるだけ早くタイヤ専門店や修理工場、ガソリンスタンドなどで規定のトルクで本締めを行ってください。

まとめ

この記事ではスペアタイヤの交換方法について解説しましたが、タイヤのパンクはすべて修理できるわけではありません。見た目ではダメージが少なくても、内部ではゴム部に留まらず、タイヤの骨格といえるコード類が損傷し、修理しても再使用に適さない場合があります。また、ラジアルタイヤはトレッド面だけが修理可能となりますが、キズの形状や大きさによって修理できないことがあります。

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